| 忙しくなった法務省 |
先日、毎年恒例の大学のクラス会に出席した際、「君が大臣になってから、法務省がマスコミの話題になることが多くなったね」と声を掛けられた。特段に目立とうと意識したこともないので、そうかなあと考えさせられた。
もともと、法務省は直接かかわる人の少ない、地味な目立たない役所である。私が国会議員となった平成のはじめころまでは、法務委員会は忙しい委員会ではなく、与野党が対決する委員会でもなかったと思う。
しかし、ある時期からは厚生労働委員会と並んで係属法律案も多く、審議が難航する委員会に数えられるようになった。
それは、司法制度改革が進められたこと。バブル崩壊、規制改革、グローバル経済化などに対応して民法、商法の大幅な改正が行われてきたこと。少年非行、テロ、麻薬、飲酒運転など犯罪の多様化、重大化に対処するため刑罰法制の見直しが必要となったこと。国際化に対応し、外国人の出入国管理を整備する必要が生じたこと。IT化に対応し、登記などの手続きを改める必要が生じたこと、などによるものだろう。
今後も、法務省は忙しい時期が続くと思われるが、これは10年以上前からのことである。
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| 悩ましい問題が相次ぐ |
ただ、そう言われてみると、今までと比較はできないが、就任以来、実に悩ましい事件が続いていることに改めて気づいた。
高田夫妻をめぐる代理出産問題、長期不法滞在のイラン人に対する退去強制問題、子どものいじめ問題や残虐な事件、死刑執行問題、医療事故に対する刑事起訴問題、離婚後300日以内に出生した子の戸籍問題、裁判員制度の広報問題、検察の行った起訴の当否をめぐる問題…。
これらが休むまもなく話題になり、記者会見や国会議論などで取り上げられてきた5ヶ月だったといえる。
これまでは、こんなに注目されることは少なかったかもしれない。とすれば、法務省をめぐる社会経済情勢の大きな変化に対応すること、にもっともっと敏感でなければならないと、責任の重大さを指摘された気がした。
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| 検察、警察のミス事件 |
いろんなことが話題になるのはいいとしても、ここにきて検察官のミスといえる事件がいくつか発生したことは遺憾である。
ひとつは、富山県で強姦犯人とされ、懲役刑に服役した人が真犯人でなかったことが判明した事件。これは、証拠を十分にチェックしないままに起訴したことにより生じたものである。
次は、離婚後300日以内に産まれた子を、離婚前の夫として届け出たことを公正証書原本不実記載で起訴したというもの。これは法に基づかない起訴といえる。
さらに、鹿児島県における選挙違反事件について、警察の強圧的な取り調べで得た自白は信用できず、その他の立証もないとして全員無罪という判決があった。
一般に、犯罪は警察が捜査摘発して検察庁に送り、検察官が起訴し、起訴に基づき裁判が行われ、有罪無罪が決定される。
検察官は何よりも、証拠と法に則り、適正に職務を遂行することが要求される。検察、警察のミスは国民の司法に対する国民の信頼を失わせ、ひいては犯罪をもくろむ者、それを支援する者を元気付けるという重大な結果を招くものであり、あってはならないものだ。さらに気を引き締めて、厳正な職務遂行を徹底していかねばならない。
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| 真実を話しにくくなる? |
このような事件も契機となり、取り調べの可視化の議論が大きくなりつつある。取り調べの可視化とは、取り調べ状況を録画録音しなければならないこととするもので、以前から法曹界で議論されている。
一見、可視化すれば無理な自白強要などは起こらず、良いことではないかと思われがちだが、ことはそう簡単ではない。
警察、検察は犯罪を確実に摘発する義務があるが、無理な取り調べを行ったり、まして犯罪をでっち上げることは絶対に許されないことは当然である。
そのために警察、検察は全力を尽くすことになるが、日本の捜査手段はおとり捜査、通信傍受、司法取引が認められているアメリカなどに比べ、きわめて限定的である。
このため、取り調べやそれによって得られる自白が重要な役割を果たすことが多くなるという面がある。取り調べの可視化ということになれば、被疑者と取調官の話が限定的となり、被疑者も真実を話しにくい状況を生ずることが予想され、犯罪捜査に支障をきたすことも懸念される。
すなわち、密室での取り調べが問題を生じないようにすることは重要だが、その解決は捜査のあり方全体の問題として検討されなければならないのである。
この検討は、法廷における検察官と弁護士の対決の有利不利に絡む。検察官は法と証拠に基づいて犯罪を立証する、いわば被告人を攻撃する役割であり、弁護士は法と証拠に基づいて犯罪に当たらないことを立証する、いわば被告人を防御する役割である。
これらを通じて裁判が公正に行われ、真相解明などがきちんと行われるようにするためには、攻撃と防御の手段が公正平等でなければならない。そのためにはどうあるべきか、という観点からの検討が必要なのである。
いずれにしても、法務省には検討課題が山積みしている。目前の問題だけでなく、将来の社会の安全安心をめざして、全力をあげていきたい。
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| (人材ビジネス 2007年4月1日/vol.249 連載第11回 永田町から より) |