政策方針

労力のかかる法案審議
政党間で見えない苦労
 
法案の国会審議の手順
 国の政策の実現手段は、基本的に予算と法律である。しかし、予算も法律も決定する権限は国会にあり、国会の決定なしに政策の実現はできない。内閣、各省庁、与党で調整して予算案、法律案を策定し、それが国会で審議決定されてようやく政策が陽の目を見ることとなる。
 当然のことであるが、それにしても、なんと労力のかかることであろうか。立案から成立までに何年もかかることはざらである。労働省課長、自民党政調副会長、衆院法務委員長など、役所、党、国会のそれぞれの立場で予算、法律にかかわってきたが、大臣としてこれまでと違う立場になり、改めてその感を深くしている。
 国会での手続きについて言えば、重要法案は、まず提出された院(衆議院または参議院)の本会議において、担当大臣による趣旨説明、それに対する質疑が行われた後、担当委員会に付託される。法務省所管の法律案は法務委員会に付託される。
 付託を受けた委員会では、担当大臣から法律案の提案理由の説明を受けた後、審議を行う。審議は、政府側に対する委員の質疑応答のほか、必要によって参考人招致、公聴会の開催などにより行われる。
 審議が終了した時点で委員会の採決が行われ、その結果は本会議に報告され、本会議で可決された法律案は、提出された院から他の院に送付される。
 送付を受けた院での審議の手順は、提出された院とほぼ同じである。すなわち、両院で同じ手順を二度繰り返して、ようやく法律案は成立することとなる。
 委員会の運営の中心は、委員長や理事で構成する理事会であり、これらは各党派の所属議員の数に応じて、委員会ごとに決定される。衆議院の法務委員会は委員定数35人、委員長は自民、理事は自民5人、民主2人、公明1人という構成である。
委員会審議の要は筆頭理事協議
 法案の審議、採決などの委員会日程は理事会で決定される。大体、理事会の前に与野党の筆頭理事(与党側は自民党、野党側は民主党)が協議し(「筆頭間協議」)、委員長の了解を得て理事会の議論を整理するので、筆頭理事の役割は大きい。
 特に、与野党対決法案の処理において、与野党の駆け引きの場が筆頭間協議となることが多いからである。それだけに裏方の役目であるが、筆頭理事は国会審議の花形とはいえ、その役割を手際よくこなせるかどうかは、国会議員としての評価につながる。
 私は厚生労働委員会の筆頭理事を2002年から05年まで、連続して務めた。その間、医療改革、年金改革、介護保険改革などなど、強行採決となるような厳しい与野党対決法案を毎年担当した。責任は重く、大変な苦労であったが、通常国会を四年にわたり、同じ委員会の筆頭理事を務めることはあまり例のないことであり、私の国会議員歴で誇りに思っていることの一つである。
 重要法案の処理は国会審議全体に影響し、与野党に対する国民の評価に直結するので各党とも国会対策委員会を設けており、現場の理事はその指示に従うこととされている。いわゆる「国対政治」といわれているもので、あまり良い印象は持たれていないようだが、きちんとした国会審議を行ううえで必要な仕組みであることは理解してもらいたいものである。
 法務省は、今国会に九つの法律案を提出した。その中でも重要なのは、
  1. 交通事故での死傷に対する刑の上限を、従来の懲役5年から懲役7年に引き上げるための刑法改正案
  2. 触法少年に対する警察の調査権限の明確化・非行少年の少年院への入所年齢の引き下げ・保護司などの保護観察における遵守事項を守らない非行少年に対する措置の明確化、などを内容とする少年法改正案。
  3. 犯罪被害者も法廷に出て被告人に質問できるようにすること等のための刑事訴訟法改正案
  4. 戸籍謄本が他人によって悪用されないようにするための戸籍法改正案
  5. 保護観察所・保護司等による刑務所からの仮釈放者、執行猶予者等の再犯を防止し、社会復帰を支援するための施策を強化するための更正保護法案
  6. 裁判員制度の施行に備え、審理に長期を要する事件について、裁判員の負担を軽減するための部分判決制度を導入するための裁判員法改正案
などだ。
大臣はほとんど国会に拘束
 これらについて、先述した両院の審議を受けることは大変である。当然、衆議院と参議院は同時に別の法案を審議することになる。そのため、今日は衆議院法務委員会、明日は参議院法務委員会というのはもちろん、午前に参議院本会議、午後に衆議院法務委員会というように、衆参を駆け回る日もたびたび生ずる。
 大臣が出席できないと法案審議はできない慣習なので、大臣の日程を調整し、法案審議時間を確保するのが与党筆頭理事の役割だ。それも大変だが、その日程に従わなければならない大臣も大変で、国会開会中は大臣の時間は国会審議にほとんどを拘束されることになる。
 特に、会期末は審議日程が過密となりがちである。与野党対立法案となると、野党側の質問は当然、厳しいものとなり、緊張の連続が何日も続くと、正直疲れる。
 問題は、国会審議の中身ということになる。どうも与野党の駆け引き、党利党略の議論が目立ち、問題の本質を国民に理解してもらうための議論になっていないのではないかという批判もある。
 選挙目当ての議論でなく、問題についてのきちんとした議論が行われ、それが公正に周知されるようにしたいものである。
(人材ビジネス 2007年7月1日/vol.252 連載第2回 続・永田町から より)