| これまでの被害者支援の経緯 |
6月20日に「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」が成立した。1年半以内に施行される。
何の責任もなく、突然に犯罪により傷害を受けた方、一家の大黒柱や愛する人を失った遺族の怒り、悲しみは多大なものがあり、精神的に大きな打撃を受け、生活にも支障を来すなど悲惨である。このような犯罪被害者が心身ともに立ち直れるよう、社会全体で支援していかなければならない。
しかし、被害者は刑事事件の取り調べ、捜査、裁判では証拠品のように扱われ、行政からの支援も不十分なままに置き去りにされてきた。これに対し、被害者の方々を中心に実情を訴え、権利利益の保護を求める運動が展開されてきた。
このようなことから、1996年に警察庁が「被害者対策大綱」を策定し、被害者の支援は捜査機関の本来の任務であると認識されるようになった。99年には「被害者等通知制度」が開始され、被害者の相談を受けるようになった。
2000年には、被害者が法廷で直接その心情を述べることができる「意見陳述制度」や、優先的に裁判を傍聴することができる制度を創設するための法改正が行われた。01年には被害者給付金制度が拡充され、殺人被害者の遺族に最高約1500万円の給付金が支給されることになった。
飛躍的に前進したのは、04年に「犯罪被害者等基本法」が制定され、これを受けて05年に「犯罪被害者等基本計画」が策定されたことである。そこでは政府の取り組むべき施策として258項目の施策が掲げられ、着々と推進されている。今回の法改正も、その一環である。
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| 画期的な今回の改正 |
今回の改正は、「被害者参加制度」「損害賠償命令制度」の創設を柱とする画期的なものであり、犯罪被害者の権利利益の保護が大きく前進することになる。
これまで、刑事裁判において被害者は、当事者であるにもかかわらず、傍聴席で裁判の推移を見守るだけで、言いたいことが言えなかった。ややもすると加害者の権利のみが主張され、被害者の気持ちが反映されないなど、尊厳を傷つけられ、阻害されているという強い不満があった。
また、被害者が損害賠償を求めるためには裁判を提起しなければならず、裁判では立証責任を負い、費用がかかり、長期間を要するなど、多大な負担を覚悟しなければならなかった。
その上、刑事事件と民事事件では事実認定、判断に食い違いを生じる事もあり、現実にはなかなか難しいという実態だった。
「被害者参加制度」により、被害者は、被害者参加人として法廷の中に入り、被告人に直接質問したり、意見を述べたりすることができるようになる。
「損害賠償命令制度」により、刑事裁判に引き続き、短期間に民事の裁判を行い、刑事事件で認定された事実、証拠を民事事件でも生かすことになる。
いずれも被害者の方々が多年強く要望されてきたもので、担当大臣として実現できたことを大変うれしく思っており、施行に万全を期していく決意である。
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| 変わる法廷の攻撃、防御 |
今回の法案については衆・参で参考人招致、視察を含め熱心な審議が行われ、その間、私は法務大臣として答弁をした。
法務委員会には弁護士の議員が多く、刑事裁判手続に関する専門用語を駆使した緻密な法律論に基づく質問が多く、法曹家でない私は答弁に苦労もあった。
立案段階からたくさんの議論があったが、被害者の権利利益を保護するという点では一致していても、野党は政府案に消極的な立場で、激しい議論があった。
例えば、初めて導入する制度であるから「稚拙すぎる」「国民の意見を十分に酌み取っていない」。刑事裁判のあり方を変えることになるから「当事者主義の訴訟構造、無罪推定の原則と相容れない」。2年後に裁判員制度が施行されることから「被害者が参加すると裁判員の適正な判断が害される」などだ。
議論を通じて実感したことは、刑事裁判は被告人を弁護する弁護人と被告人を訴追する検察との攻撃・防御の場であるという当然のことだった。
このため、被害者が法廷に直接参加することにより検察に有利になるのではないか、という点が最大の争点になっていたと思う。一方、検察が被害者の立場を的確に代表できていなかった、という批判も多く出された。
これらは今後の運用において、大いに配慮すべきことである。
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| 弁護士費用などの課題も |
残された問題もたくさんある。「被害者参加制度」「損害賠償命令制度」が円滑に運用され、必要な人に活用されるよう、被害者参加人に付き添う弁護士費用の支援などを考えていかなければならない。
また、刑事裁判以外の分野においても、幅広く被害者に対する経済的支援、相談活動の充実、「犯罪被害者支援センター」など民間団体への援助に取り組む必要がある。政府ではこれらについて閣僚会議を設けて検討を進めており、今年末までに方向付けを行うこととしている。
今回の法改正を契機に、被害に遭われた方々の支援に努力するとともに、被害が発生しないように犯罪のない安全・安心な社会をめざして全力を尽くしたい。
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| (人材ビジネス 2007年8月1日/vol.253 連載第3回 続・永田町から より) |